覗かれていた遠い夏の日の秘密
2006年7月27日 過去の日記帳からSの告白。
遠い遠い夏、ちょうど今頃の季節。
高校も夏休みに入り、人気のない夕暮れの教室で、
Sはわたしと彼の話し声を耳にして立ち止まった。
覗き込むと、
机に向かって何かを書いている彼とうしろ姿のわたし。
彼がいう。
「なんだ、行けないのか?」
わたし「無理よ、こんなところで。」
彼「じゃあ、別にいいけど。」
わたし「できる、ちゃんとする。だから、ねえ、指を貸して?」
彼「今、難しい計算しているところだから、無理だよ。」
わたし「左手でいいから」
Sは何の会話かわからなかったけれど、なぜかドキドキしながら、「彼の指で何をしているのだろう?」と思っていたそうだ。
しばらくの間、わたしはうつむいたままで、でも少しからだが震えているみたいで。
何の音も聞こえない時間、ただ、わたしのからだがかすかに震えているみたいで・・・。
その間、まるでその様子を観るのが神から与えられた使命であるかのように、Sのからだがその場に張り付いて動かなかったそうだ。
覗き込むためにコンクリートの壁に押し付けた頬に、コンクリートのザラザラとした感触と冷たさだけが感じられたそうだ。
どれくらいの時間がたったのであろうか、
突然、わたしの
「あうううぅぅぅ」
という声が漏れ聞こえてくるとともに、
のけぞるわたしのからだ。
そこにSが見たのは、机に向かい書き続ける彼と彼の指をくわえわたしの横顔だった。
それがSの原体験ともいうべき光景だそうだ。
計算する彼、その前で自慰するわたし、
コンクリートのザラザラした冷たい感触・・・。
その夜、Sは初めて自慰なるものをしたそうだ。
柱に頬を押し付けて、指をくわえて、昼間見た光景を思い浮かべて・・・。
それ以来、Sは頬にザラザラとした冷たい感触を覚えないと、逝けないそうだ。
ずっと誰にも言えない秘密・・・
変態じゃないのか・・・、
そう悩んだ時期もあったそうだ。
結婚しても、夫に言えるわけでもなく・・・。
そういえば、先週の夜もソファーの足に顔を寄せていたな・・・。
そして、彼女はきっと、わたしの指に彼の指を感じていたんだろう。
そう思いながら、Sの告白を聞いていた。
わたしは不意に、
「ねえ、このソファーでレディーは彼に激しく抱かれて失神したのよ。」
とSに言った。
なぜかわからないけど。
Sは「そうなの・・・、いいな。」
そう言いながら、ソファーの前の床にひざまずき、ソファーの感触を頬で感じていた。
Sが言う。
「ねえ、ラビが彼と別れた本当のわけは何なの? どうして他の人と結婚したの?」
わたしは、すべてを話した。
どうしてか、よくはわからないけれど。
でも、その夜は、そのアトリエは、そのソファーには、特別な何かがあった。
遠い遠い夏、ちょうど今頃の季節。
高校も夏休みに入り、人気のない夕暮れの教室で、
Sはわたしと彼の話し声を耳にして立ち止まった。
覗き込むと、
机に向かって何かを書いている彼とうしろ姿のわたし。
彼がいう。
「なんだ、行けないのか?」
わたし「無理よ、こんなところで。」
彼「じゃあ、別にいいけど。」
わたし「できる、ちゃんとする。だから、ねえ、指を貸して?」
彼「今、難しい計算しているところだから、無理だよ。」
わたし「左手でいいから」
Sは何の会話かわからなかったけれど、なぜかドキドキしながら、「彼の指で何をしているのだろう?」と思っていたそうだ。
しばらくの間、わたしはうつむいたままで、でも少しからだが震えているみたいで。
何の音も聞こえない時間、ただ、わたしのからだがかすかに震えているみたいで・・・。
その間、まるでその様子を観るのが神から与えられた使命であるかのように、Sのからだがその場に張り付いて動かなかったそうだ。
覗き込むためにコンクリートの壁に押し付けた頬に、コンクリートのザラザラとした感触と冷たさだけが感じられたそうだ。
どれくらいの時間がたったのであろうか、
突然、わたしの
「あうううぅぅぅ」
という声が漏れ聞こえてくるとともに、
のけぞるわたしのからだ。
そこにSが見たのは、机に向かい書き続ける彼と彼の指をくわえわたしの横顔だった。
それがSの原体験ともいうべき光景だそうだ。
計算する彼、その前で自慰するわたし、
コンクリートのザラザラした冷たい感触・・・。
その夜、Sは初めて自慰なるものをしたそうだ。
柱に頬を押し付けて、指をくわえて、昼間見た光景を思い浮かべて・・・。
それ以来、Sは頬にザラザラとした冷たい感触を覚えないと、逝けないそうだ。
ずっと誰にも言えない秘密・・・
変態じゃないのか・・・、
そう悩んだ時期もあったそうだ。
結婚しても、夫に言えるわけでもなく・・・。
そういえば、先週の夜もソファーの足に顔を寄せていたな・・・。
そして、彼女はきっと、わたしの指に彼の指を感じていたんだろう。
そう思いながら、Sの告白を聞いていた。
わたしは不意に、
「ねえ、このソファーでレディーは彼に激しく抱かれて失神したのよ。」
とSに言った。
なぜかわからないけど。
Sは「そうなの・・・、いいな。」
そう言いながら、ソファーの前の床にひざまずき、ソファーの感触を頬で感じていた。
Sが言う。
「ねえ、ラビが彼と別れた本当のわけは何なの? どうして他の人と結婚したの?」
わたしは、すべてを話した。
どうしてか、よくはわからないけれど。
でも、その夜は、そのアトリエは、そのソファーには、特別な何かがあった。
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