新しい携帯

さっそく新しい携帯を買った。
　携帯をバキッしても、すぐに買える。
　便利な時代になったよね〜

　20年前に携帯があったら、きっと今頃は・・・なんて思ったり。
　でも、わたしが違う人と結婚したから、彼とめぐり合って幸せになれた人がいる。
　わたしは、幸せを分け与える天使・・・

　・・・なわけないじゃん！
　悔しいよ〜

　バキッとした携帯は、海の底。
　新しい携帯に電話番号を記憶させる・・・といっても、覚えているのは彼の番号だけだもの。
　でも、絶対にかかってこない。
　だって、彼は新しい携帯の電話番号を知らないんだもの。

　教えたいのだけど、知って欲しいのだけど・・・
　かかってこなかったら・・・と思うと勇気が出ない。
　「電話してね☆」
　って言えたら、いいのにね。
　ただ、素直になれなくて・・・
　それに、足手まといにはなりたくないんだ、一秒でも。
　ただでさえ、忙しい彼だもの・・・ちゃんと睡眠をとってほしいよ。　
　過労死なんて嫌だよ。

　わたしより、長生きしてね。
　わたしが死んだら、お葬式には、絶対に来てね。
　
　からだが焼かれる前に、あなたの手でからだを触ってね。
　昔のように、頭をよしよししてね。
　あなたの手で、浄化してね。

　それまで、一人でいい子でいるから・・・
　おばあちゃんになっても、一人でいい子でいるから・・・